【後編】このままでは、日本に本物の棕櫚箒がなくなる!?日本伝統の棕櫚箒の実情とは?

2016年4月に掲載した記事を加筆修正しています。

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こんにちは、tomocoです。

 

前回ご紹介した棕櫚箒(しゅろほうき)ですが、現在日本の「棕櫚箒」が危機的な状況にあることを、みなさんは知っていましたか?

 

【前編】電気も使わず、音もでない!最先端の掃除道具は、棕櫚(しゅろ)からできた日本伝統の箒(ほうき)でした

 

 

 

 

 

 

「高級」「高品質」な棕櫚箒に苦情が!?

 

近ごろ、ジワジワと「伝統的な掃除道具」である「棕櫚箒」が本物志向の人たちを中心に人気を集めています。日本の伝統が見直されるのはいいことですが、実際には品質の良くないものが出回り、「棕櫚箒に対する苦情」が増えてきているとのこと。

 

ここ数年は、「棕櫚箒」ならどんな箒でも「高級」「耐久年数20年の高品質」などの宣伝文句で高額で販売されることが増え、宣伝文句を信じて購入したお客様が、結果としてがっかりされる残念なケースが増えている現状があります。

 

これは、棕櫚製作舎の棕櫚箒職人 西尾香織さんの言葉。現状について、さらにこう語ってくれました。

 

 

昔から棕櫚箒は「ピン」から「キリ」まであり、使う人の用途に合わせ多種多様な品質の「棕櫚箒」を職人が作っていました。箒の価格と品質ははっきり分かれていて、十年程前までは、ある程度「棕櫚箒」そのものの品質に見合った店頭価格で販売されることが多かったのです。しかし現在、箒の専門知識を持ち、品質を見極めることができる販売店は少なくなりました。とくに通信販売でのトラブルが多く、消費者が写真、文章、そして販売店を信用し「棕櫚箒」を購入した結果、期待と異なる品質、性能の「棕櫚箒」が届き、苦情となっているのです。

 

 

 

このようなことになる原因の一つが、上質な棕櫚箒をつくることが職人が少なくなってしまったことです。

 

 

 

 

 

 

ラベルを貼っただけで「日本製」?

 

 

今作られている「棕櫚箒」の原料は、数十年前に国産棕櫚生産が終わってしまうと、輸入原料に変わり、さらに日本の棕櫚箒職人が数名となった今、上質な「棕櫚箒」を手に入れるのは困難な状況に陥っています。近年、国産棕櫚の生産が一部復活し、それらはタワシと棕櫚紐用の原料として用いられているそうです。

 

 

 

また、「一次加工を中国で行っているが、最終加工は日本なので、日本製の棕櫚箒」と表する「棕櫚箒」が存在するという現状。「最終加工は日本」と言っても「どこからを日本で加工しているのか?」は不明確で、品質が分からない「棕櫚箒」があちらこちらで流通していることが推測されます。

 

 

 

その状況に対して、西尾さんは補足説明をしてくれました。

 

掃除度具として「棕櫚箒」(長柄箒・手箒)を選ぶ場合、例えば「国産」「日本製」「和歌山県産」と書かれた「棕櫚箒」が、通信販売などで簡単に購入できるとしてもお勧めしません。なぜなら、現在、和歌山で伝統的な「棕櫚箒」(長柄箒・手箒)を作れる職人は3人ほどとなり、上質な「高級・高品質」の「棕櫚箒」ほど生産量が少なく、その大半は老舗箒店に納品されているからです。なお、私が運営する棕櫚箒製作舎は直売、いわゆる販売業者を通すことなく直接注文いただき「誂え物」として製作し販売しています。補足ですが、和歌山県以外にも棕櫚箒職人は数名いらっしゃいます。

 

 

確かに「最終加工は日本だから、その箒は日本製」というのは、間違えではないのかもしれませんが、品質・性能も日本の伝統である「棕櫚箒」のように扱い商売をされている方がいるというのは、とても残念です。

 

 

 

 

 

 

和歌山で伝統的な「棕櫚箒」を作れるのは、わずか3人!?

 

現在和歌山で、棕櫚荒神箒・小箒を除く、伝統的な「棕櫚箒」(長柄箒・手箒)を作っているのは3人ほどだそう。今回お話を伺った棕櫚箒製作舎の棕櫚箒職人 西尾さんはそのうちのお一人。西尾さんは、注文者の方の身長や性別、用途などきちんと聞いた上で、1本ずつ「誂え物(あつらえもの)」として「棕櫚箒」を製作しています。

 

 

 

西尾さんが作る「誂え物」とは

 

「受注製作の特別誂え」という意味は「棕櫚箒」の最高級品です。「誂え物」の「棕櫚箒」を作る時最も気を配るのは、「実用性と特別な掃き心地の良さ」です。材料ももちろん最高のものを選び、高耐久性で見た目も美しい箒を作ることを目指し、お客様がその「棕櫚箒」で掃いた時に手に感じる心地よさ、ごみの取れ具合、穂先の柔らかさや弾力、棕櫚の密度や重さを考えて作ります。昔から「誂え物」を作ることができるというのは、職人の誇りなんです。

 

 

 

「3人以外がつくる箒が粗悪品」ということではないそうですが、上質で伝統的な箒が欲しいと言う方は、以下のお店で、直接見て購入するのがおすすめだとのこと。そちらのお店では、和歌山の棕櫚箒職人が作った箒が手に入ります。

 

 

 

 

棕櫚箒を素敵だなぁ、と思ってくださり、掃除道具として棕櫚箒を使ってみたい方は、老舗箒専門店の店頭で気に入ったものを購入してください。売る側も誇りを持って、そして商品に自信を持って取り扱ってらっしゃいます。

 

と言って、お店をご紹介くださいました。

 

 

内藤商店 

住  所:京都市中京区三条大橋西詰 
電話番号:075-221-3018
営業時間:9:30~19:30

 

白木屋伝兵衛

住  所:東京都中央区京橋3-9-8 白伝ビル1F 
電話番号:0120-375389
営業時間:月~土 10:00~19:00 (日、祝日休み)

 

 

 

世の中には、それぞれの分野において、審美眼を持った「目利き」という人がいます。「目利き」がいなくなれば、良しあしを判断できる人がいなくなり、本来その製品が持っていた価値が徐々に姿を消してしまうということです。

 

 

 

通信販売は便利な反面、直接見て触って購入することができません。お店で見て、聞いて、触って、自分に合ったものを購入するのが、一番なのかもしれませんね。

 

 

 

 

今回、記事を書くためにお話を聞かせてくださった、棕櫚箒製作舎の西尾さんが作る箒はとても美しく、一生ものの箒として1本は持っておきたい本物の掃除道具。残念ながら現在は予約の箒を製作中のため、新規の注文を受けることは一時休止されています。

 

 

 

「棕櫚箒の現状」をより深く知ることにより、日本の伝統技術をこのまま放っておいては本当に廃れてしまうという危機感を感じました。「日本の伝統文化」を技術を伝え、守り続けていくことは、簡単なことではなく、厳しい世界であることは間違いありません。しかし、「日本の伝統文化」をけん引していく人が、「棕櫚箒」の世界に居続けてくれることを、切に願います。

 

 

 

まずは、良質なものを見極め購入する力を、私たちはつけなくてはいけないのかもしれません。

 

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(写真:棕櫚箒製作舎の箒)

 

 

 

 


 

前編および今回の記事は、主に棕櫚箒製作舎 棕櫚箒職人の西尾香織さんにいろいろお話を聞かせていただき、専門的な箇所は西尾さんに監修いただきました。この場をお借りして改めてお礼申し上げます。

 

棕櫚箒職人 西尾 香織さん プロフィール

1976年 広島市生まれ、広島市育ち 広島市立大学芸術学部デザイン工芸学科卒後、印刷関係のデザイン事務所に就職。
2002年 和歌山県の風土に魅せられ転居、印刷関係の仕事に就く。この時期、桑添勇雄の棕櫚箒を郷土資料の本で知り、頭から離れなくなる。
2006年 桑添勇雄に弟子入りを許され、桑添勇雄商店で見習い職人として働きはじめる。丸5年の修行期間に、大小合わせて1万本以上の棕櫚箒製作を経験。
2012年 師の許しを得て棕櫚箒職人として独立。棕櫚箒製作舎をはじめる。和歌山県の紀美野町山あいに民家を借り、農的暮らしをはじめる。18写真:棕櫚箒製作舎の工房風景

出典:棕櫚箒製作舎

 

 

 

 

 

 

 

 

written by tomoco
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